和解委員会パンフレット6
2004年3月12日
編集:日本ホーリネス教団 福音による和解委員会
発行者:内藤達朗/発行所:日本ホーリネス教団

はじめに


 二〇〇一年五月一一日、熊本地裁で争われていた「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟において、ハンセン病患者の隔離は違憲であるという判決が下されました。九〇年余の隔離政策に携わった、厚生大臣、国会議員の過失責任が明確になりました。
 他方、二〇〇三年一一月に、熊本のホテルで元患者宿泊拒否事件が起きたように、ハンセン病に対する偏見は、日本社会の中になお根強くあることも明らかになっています。

 しかし、行政の責任や社会一般の偏見ばかりでなく、教会とこの問題とのかかわりは、明確にしなければならない大きな課題です。教会の歴史を振り返ると、私たちキリスト者の「らい病」についての理解や適応が、この病気に対する偏見を助長してきたと言わざるを得ないからです。
 なかでも、聖書の「らい病」をハンセン病と同一視する、この病についての無知と、「らい病」を罪の象徴とする、誤った聖書理解には、私たちは特に留意しなければなりません。それは、私たちの聖書理解ばかりでなく、福音理解、人間理解が問われる問題だからです。
 また、この病気についての充分な知識がないままになされた対応、例えば聖書の「らい病」を「ハンセン病」と読み替えてきたことなどは、配慮のつもりでも、偏見を助長してきました。
 最近、聖書翻訳に関して、「らい病」についての訳語・表記の変更が相次いだことも、この問題とキリスト教界の関係の深さを表しています。

 このような諸課題に対応するために、当委員会では、先の熊本地裁の判決以来、遅まきながら検討を重ねてきました。医学的、歴史的、神学的に広範囲な検証が必要な課題ですので、不充分ではありますが、聖書が正しく語られ、またハンセン病についての教会の理解が深められることを願いつつ、その対応の指針を紹介いたします。
 なお、このパンフレットにおいては、病名については原則として「ハンセン病」と表記しますが、聖書に訳出され、教会で語られてきた言葉として、「らい病」という言葉を用いることをご了承ください。