Q6 「愛国心」を教えるのが問題だといわれますが、新・教育基本法では「愛国心」という言葉そのものを使うのをやめ、「統治機構としての国を愛するわけではない」ということを政府が確認したので、それほど問題ないのではないでしょうか?

A6 論議を呼んだ「愛国心」は、新・教育基本法の第二条(教育の目標)5項に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」という表現で記載されました。国を愛する「態度を養う」という表現によって、かえって、抽象的な理念だった「愛国心」が、それを守る態度のいかんで達成度を計られる評価の対象となってしまいました。すでに、愛国心の達成度を盛り込んだ通知表が複数の地方で現実に出現しています。「国を愛する」ことが、「道徳心」「公共の精神」「伝統と文化の尊重」などと並んで扱われる時、それはどのような意味を持つでしょうか。町村信孝・元文部科学相はテレビ番組で、戦後教育基本法の下で伊勢神宮に生徒を連れて行く学校が減ったことに言及し、「信教の自由の見地から日教組が間違ったことを教えた。そんなバカなことはない。イスラム教や仏教を押し付けようというのとは違う」と発言しました。ここに「国を愛する」態度を学校で教えようとする意図の本音が表れています。皇室の神社である伊勢神宮に代表される神道を、他の宗教とは違う「我が国の伝統と文化」として扱い、当然のように児童生徒に参拝させようとする、それはまさに戦前キリスト教会を偶像礼拝の罪に陥れ、日本全体を侵略戦争に駆り立てた国家神道体制の再来そのものです。新・教育基本法が成立した今、私たちはこのような現実に直面していることを肝に銘じ、今後この法律が教育現場にどう適用されていくのかを監視しなければなりません。