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長く「らい病」と訳されてきた言葉は、旧約聖書では「ツァーラト」というヘブル語と、新約聖書では「レプラ」というギリシャ語です。これらが、皮膚の病を含んでいることから、ハンセン病と理解され、「らい病」と訳されてきたのですが、今日、「ツァーラト」と「レプラ」は、何の病であるか特定できていません。
ということは、旧約聖書に記されている「ツァーラト」は、ハンセン病とは関係がないことになります。実際、レビ記に描かれている「ツァーラト」は、皮膚の病ばかりではなく、ある種のカビと考えられるようなものも含まれており、明らかにハンセン病の症状とは異なります。 歴史的にも医学的にも、何の病であるか分からないものを、特定の病気と結びつけることは誤りです。
例えば、ルカによる福音書第四章二七節には、旧約聖書のナアマンなど、エリシャの時代に「レプラ」があったと記されています。しかし、旧約聖書の時代の「ツァーラト」が何の病か特定できない以上、この「レプラ」をハンセン病と言うことはできません。 また、新約聖書には、「レプラ」の症状は全く記されていません。つまり、この病に関する情報としては、旧約聖書以上の事柄を知ることができないのです。このことも、新約聖書の「レプラ」を、ハンセン病と特定できない理由の一つです。 新約聖書の時代、今日のハンセン病は、「エレファンティアシス(象皮病)」と呼ばれていたことが明らかになっています。それが「レプラ」と言われるようになったのは、中世と言われています。ハンセン病は、「レプラ菌」による感染症であることは後述しますが、この「レプラ菌」という呼称は学術的に確定しているものの、新約聖書の「レプラ」という呼称とは歴史的に隔たっています。 |