1. 聖書の「らい病」について知る

  1. 翻訳の問題
    聖書の「らい病」はハンセン病ではない
  1. 諸訳において
こうしたことから、聖書で「らい病」と訳されてきた「ツァーラト」、「レプラ」は、何の病であるか特定されておらず、したがって今日のハンセン病だと言うことはできません。最近の聖書翻訳をめぐる動きは、このような「ツァーラト」、「レプラ」理解が背景になっています。
 まず、私たちの教団の公用聖書とされた、日本聖書協会「改訳口語体(通称「口語訳」)聖書」では、「レプラ」は長く「らい病」と訳出されていましたが、二〇〇二年の版から「重い皮膚病」に改訂されています。口語訳聖書においても改訂がなされたのは、「らい病」をめぐる問題が、今なお深刻な問題であることを表しています。
 日本聖書協会「新共同訳聖書」では当初、旧約聖書の「ツァーラト」を「重い皮膚病」「かび」、新約聖書の「レプラ」を「らい病」と訳出していましたが、最近の版は「重い皮膚病」に改訂されています。いずれにしても暫定的な措置であると発表されました。
 また、新改訳聖書刊行会「新改訳聖書」改訂第三版は、「らい病」と訳されてきた言葉を、「ツァラアト」、「ツァラアトの者・人」、「ツァラアトに冒された(者・人)」と訳出しました。これも、特定の病気と結びつけることができないという判断によるものであり、暫定的なものとされています。そして、同聖書の「あとがき」にもあるように、「適切な解釈」が求められることになります。
 このように、「口語訳聖書」、「新共同訳聖書」、「新改訳聖書」ともに、古い版の聖書を使用する場合、適切な対応が必要です。