1. ハンセン病について知る
 教会では、古くからハンセン病に対して「配慮」してきました。しかし、ハンセン病についての知識が不充分なままでなされる配慮は、本当の隣人愛にはなり得ません。「らい病」を「ハンセン病」と言い換えるなどの配慮も、適切ではないことを見てきましたが、今日、それを「重い皮膚病」と読み替えたところで、教会の差別意識が払拭されると考えるのは大きな間違いです。
 まずハンセン病について知り、教会がどのようにかかわってきたのか、学ばなければなりません。


  1. ハンセン病とは
     治る病気である
 ハンセン病は、レプラ菌(らい菌)によって起きる感染症です。一八七三年に、ノルウェーの医師アルマウェル・ハンセンによってこの菌が発見されたために、ハンセン病と呼ばれています。レプラ菌は、性質は結核菌に似ていますが、純粋培養法は見つかっていません。なお、「レプラ菌」という名称と、新約聖書の「重い皮膚病」の原語「レプラ」には、歴史的に隔たりがあることは既に触れました。
 ハンセン病は伝染病ではありますが、実際にはレプラ菌の伝染性は非常に弱いものです。皮膚の接触などが感染の経路と言われ、皮膚が弱い乳幼児期であれば感染の可能性はありますが、大人に対する感染力は極めて弱く、療養所内で、入所者から職員に感染した例はないと言われているほどです。
 レプラ菌に感染してから発病するまでの期間は長く、三年から二〇年あります。そのため古くから遺伝性の病気と考えられてきました。それはまた、優生思想に基づく、強制的な隔離や断種の原因ともなりました。
 ハンセン病に特徴的な症状は、末梢神経に表れるものであり、知覚麻痺や運動神経麻痺などがあります。それらに起因する二次的症状があり、それは手指、足趾の屈曲、切断、短縮、更に顔面に見られる変容(眉毛脱落、鼻柱の陥凹、顔面神経麻痺、顔面腫脹)などです。これらの症状がない限り、それをハンセン病と断定することは難しいとされています。
 また、感染の状況は、先の熊本地裁の判決文によると次の通りです。
 
 1. 感染し発病するおそれが極めて低い病気である。
 2. 患者数は激減している。
 3. それ自体、致死的な病気でないばかりか、自然治癒するものもある。
 4. プロミン等の医薬により治癒する。
 5. 戦前から、隔離する必要のないことが国際会議で提唱されていた。

 このようにハンセン病は、隔離しなければならないような、特別の病気ではありません。